ヤバい事件現場に
ピアノを置いて
通りすがりの野次馬や
事件関係者が
自由に演奏する姿を
撮影するという番組だ

この間は都心にある
とある高層マンションから
若い女性が飛び降りた現場だった
何でも男に結婚すると騙されて
貯めた金を貢いで捨てられ
精神を病んでいたらしい

先ず予備校生の女の子が
おずおずと進み出ると
中島みゆきの「この空を飛べたら」
を弾き始めた
状況が状況だけに
あまりにフィットし過ぎていて
周りの人もひいているのが分かる
続けて「髪」を弾こうとしたので
スタッフに止められた

続いて
今度は若い男女のカップルが
近づいてきて
男の伴奏に合わせて女が歌い始めた
曲はエディ・ピアフの名曲「愛の賛歌」
フランス語で歌いきると
周囲から拍手が起こった
この歌はエディが
飛行機事故で死んだ恋人の
世界ミドル級チャンピオン
マルセル・セルダンに捧げたものだと
画面にスーパーが流れる

最後は
老人がショパンの「別れの曲」
をしみじみと弾いた
元ピアノ教師だった老人は
生徒達が開いた同窓会に呼ばれて
久しぶりに都心に足を運んで
事件に遭遇したとのこと
「どんなことがあっても
死んではいけないよ」
と国営放送的な発言をして
締めくくった