薄明かりの場所
塔野夏子
薄明かりの場所にいる
何もない 誰も来ない
ただ涼やかな静けさに満たされて
佇んでいると
薄明かりの中を
記憶たちが通りすぎてゆく
色のない幻燈のように
《それらは 私の記憶であったか
《それらは 過ぎ去った日の
《あるいは これから来る日の
ひとしきり記憶たちが
通りすぎたあと
ほのかな銀の睡蓮が幾輪か
ゆっくりと 灯りはじめる
自由詩
薄明かりの場所
Copyright
塔野夏子
2021-10-17 10:14:30