クロッキー帳の夜
新染因循




不自由な直線で描かれた雨に
うたれている
肉体

つまりきみは
一歩も動かないまま
ふるえてある

姿という姿はめくられ
白紙というには色褪せたページが
きみの瞳のなかで輪廻する

円をえがいてまわること
まわりながらまわすこと
まわしながらにげたこと

つまりきみは
一歩も動かないまま
ふるえてあった

ふるえてあったから
ぼくらは夜をかなでて
きみのしらんだ指にわらった

落日が表紙のようにとざされ
ぼくは手のひらのうえに
きみという地図をたしかめる



自由詩 クロッキー帳の夜 Copyright 新染因循 2021-10-13 08:50:59
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