海へ、それが寄生虫の意思だとしても
useless
月子は、私の母のことだが、死ぬべきである
私は川沿いの円環を下り荒れた祭壇、
八百万もいれば中には中々に信じがたい神もいて、呪いを司る針金虫の神の祭壇に
軽く手首を切る
赤
月子は海に行きたいと言う、はずである
図体ばかりのフォードに片道分のガスを入れる
崖を飛び降りる瞬間を夢想して。
最後の旅の朝
月子は助手席から、
二人分の航空券を手渡し
月子は一切の人影がないサン・マルコ寺院に五体を投げ出す
潮の匂い
ヴェネツィアの夕闇は神の悪戯さえもあぶり出す
私の額から二筋の蒸気が立ち上り消え去る
むしろ呪われていたのは私だったのか
月子は、そして私は、まだイタリアにいる
日本に帰ることはないだろう