末下りょう

空は曇り


街は曇り ビルの谷間の 冷えたぬくもりに躓き  吹き抜けるかぜ  なぜ と  灰とかげ──背広の音色が波のように行き交う歩道に落としたピルは
奈落の白い底


騙したあとの騙し絵の ように
黙ったままの口元に
けさ
ふった紅いルビを
街路樹の木枯らしにさらわれて

津波のようなあなたが すべてをなぎ倒しながら
ゆっくり信号を渡ってくる


為す術もなく

わたしの肌を流れていくあなたの肌にのみ込まれて 何処までも流されていく


逃げおくれたのは言葉
わたしじゃない



街は曇り


空は曇り





自由詩Copyright 末下りょう 2021-10-05 14:07:12
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