君の翅
塔野夏子
君の翅を食べた
君がそうすることを望んだから
君の翅はよくできたお菓子のように
心地よい甘さで
もろくあわく溶けていった
最後に君の背に残る
翅のついていた痕をそっとなぞると
それも夢のように消えうせた
その一部始終のあいだ
君は僕にずっと背を向けていたから
君が泣いていたのかどうか僕は知らない
自由詩
君の翅
Copyright
塔野夏子
2021-10-05 10:16:03