二十一歳に書いた歌詞
板谷みきょう

  『鬼哭啾啾』(きこくしゅうしゅう)
こんな夜更けに誰だろう心の扉を叩くのは
あらん限りの力を込めて救いを求めて呼んでいる

土砂降り雨のその中で頼る当てなくたどり着き
今にも喉張り裂けんばかりに救いを求めて呼んでいる

覗き窓から伺い見れば今まで会った事もなく
それでも息も絶え絶えに救いを求めて呼んでいる

誰も耳を貸そうともせず自分の事に精一杯
扉の外で泣きながら声は小さくなって行くのに

扉を開けて小さな声で見知らぬ人とは知りながら
私で良けりゃ力貸します甘い言葉を掛けました

救いを求めた人は言う誰がアンタを呼ぶものか
一言つぶやき息絶えた抱えた私の腕の中

人一人の命が今消えたというのに誰もが皆
振り向こうともせず知らん顔人の命が消えたというのに

救いを求めた相手は誰だ お前か
お前か お前か…

*★*――――*★*

 『リフレイン』
耳障りなジャズのながれるサ店で
長い髪で隠れた耳に口を寄せ合い話した
望みに届かぬ生活をいつも心底悩んでた
親のすねの匂いが一杯の部屋で
煙草をくわえて酒飲みながら一夜を明かした
男同志と友情が必ずあると信じてた

リフレイン リフレイン
戻れるものならもう一度

防波堤に砕け散る波打ち際で
髪かきあげて照れて笑って君を見詰めた
解り合える事だけが愛の全てだと思ってた
遠く漁り火の見える夜の浜辺で
膝を抱えて涙流して訳もなく苛立った
掴みきれない自分の心を考えあぐねた

リフレイン リフレイン
戻れるものならもう一度

暑い日差しの人込みの歩行者天国を
肩いからせて金も無く当ても無く歩いた
それが精一杯の反抗と思っていた

*★*――――*★*

 『みっく』
火の付かない石油ストーブのせいで
部屋の中 肌寒いね
僕は君の部屋の中とりとめもなく話し続ける
「寒くない?」 の尋ね言葉に 僕痩せ我慢
押し入れからは桃色のちゃんちゃんこ
ちゃんちゃんこを着た君はこすもすの様だね
羽織って君は又
僕のまとまらないとりとめのない話を
可愛い笑顔で聞いている

オーブントースターで焼いたホットケーキは
パンの様 おいしいね
僕は君の白いギター音合わせて唄い始める
「録音したい。」 の話し言葉に 僕照れ笑い
持って来たのは大切なカセットテープ
ちゃんちゃんこを着た君はこすもすの様だね
座って君は又
僕の突っ掛かり思い出し唄う歌を
可愛い笑顔で聞いている

*★*――――*★*

 『Madam0番地』
馬鹿言うもんじゃないわよお熱を上げた坊やといっても
軽々しく言うべき言葉じゃないのよ
あたしは特別な感情で寝た訳じゃないんだから

男と女の関係は坊やが思う程綺麗じゃないわ
心とからだは別なモノ
今に坊やも気付くはずよいつまでも子供じゃないんだから

そりゃ愛があれば年なんてと世間じゃ言ってはいるけれど
そんな愛を壊すのも世間なのよ
我がまま言うのも程々にしてあんまりあたしを困らせないで

あたしだって出来れば貴方と暮らしたい後ろ指さされても
でもそれは土台無理な話なの
捨てられる不安を抱きながら笑って暮らす事は出来ないわ

何度言えば解ってくれるのあたしには子供がいるのよ
うまくいく筈がないわよ貴方だっていつかあたしを捨ててしまうわ
いいえ 絶対間違いはないわ

だからバイバイ
貴方は貴方の年相応の素敵な彼女を見付けて頂戴
そしてもうこんな店とオサラバしてね 

*★*――――*★*

『ねがい』
何も無いけど 
何も出来ないけれど
絶え間なく流れ 
過ぎ去る時の中で
私は生きている

何も知らないけど 
何も出来ないけれど
めくるめく毎日の 
それなりの出来事に
私は笑っていた

出来ることならば 私は
一粒の涙 流れても
幸せの白い花で
この街を埋め尽くしたい

どうしようもない事や
どうにもならない事に
何とかしようと
思うことも無く
溜息をついていた

それが些細な切っ掛けで
貴方が目の前に
ほんの偶然の
素晴らしいめぐり逢いで
私自身に気付いた

出来ることならば 私は
一粒の涙 流れても
幸せの白い花で
この街を埋め尽くしたい

*★*――――*★*

『すすき野原で見た狐』
夕陽が沈んだその後に 酒にうかれて千鳥足
月の明かりで見つけたものは 娘に化けてる いたずら狐

星の降るような空の下 木の葉を頭に宙返り
なかなか娘に化けきれず くるりくるくる いたずら狐

野原の細道 座り込み 徳利片手にちびちびり
酒の肴にするはずが いつしか歯痒く励ます身

何処かひとつを化け残し 木の葉を変えては くるくるり

徳利が空になった頃 みごと狐は娘の姿
やっとのことで娘の姿 ふと こぼした穏やかな笑顔

そのいたいけな娘の仕草 我を忘れて立ち上がる
月の光に照らされて それに気付いた いたずら狐

汗にまみれた顔赤らめ ペロリ舌だし すすきに消える
我に返って追ってはみたが 何故だかそこには かんざし一つ

すすき野原で見た狐 誰ぞ所在を存ぜぬか

すすき野原で見た狐 誰ぞ所在を存ぜぬか

*★*――――*★*

『故に愛』
出逢いの中で見つけたものは優しい笑顔の貴方
いつの頃からか惹かれてく自分に気付いた私
今 貴方に包まれて幸せなはずなのに

離れてること会えないことでこんなに苦しい
二人 心 結ばれたのに一緒になれないなんて

せめて貴方の胸に秘めた熱い想い本当なら
掴まえて離さないでいつまでもどんな事が有っても

こうして独り過ごす夜には遠く感じる貴方
信じていても縋ってしまう弱い私は駄目ね
貴方は幾つもの言葉で愛 誓ってくれたのに

離れてること会えないことでこんなに切ない
二人幸せ求めてるのに一緒になれないなんて

せめて貴方の胸に秘めた熱い想い本当なら
掴まえて離さないでいつまでもどんな事が有っても



自由詩 二十一歳に書いた歌詞 Copyright 板谷みきょう 2021-09-28 22:26:39
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