九月 昼/夜
塔野夏子
九月のしずかなあかるさは
透明な翳りを含んで
その中に点々と
露草の青 浮かんで
波紋するさよならを
心に溜めて
やわらかく孤立しながら
佇む意識の彼方に
ほそい岬
それは空へ帰る道のような
残された文字たちの群れが
手のなかでざわめいていても
それを読むのはまだ先でしょう
やがて夜が来て
銀にふるえる虫の音に
波紋するさよならが包まれて
それを聴きながら
やわらかな孤立にくるまれながら
ゆっくりと眠りに落ちてゆきます
自由詩
九月 昼/夜
Copyright
塔野夏子
2021-09-27 11:01:52