十九歳に書いた歌詞
板谷みきょう

『雪の中』
雪の中歩いてく
膝まで埋まって歩いてく
春が来るのを信じながら
明日は明日の風が吹くと
無理をして
引かれ者の小唄を歌っていた

雪の中歩いてく
腰まで埋まって歩いてく
来るはずのない春を待ちながら
あれから明日は来なかったし
風さえも吹かなくて
後悔先に立たず噛み締めていた

今までだって嵐や吹雪の中
歩いて来た
誰もが皆そうだったし
解る事は自分の事だけ
皆いつかは死んでしまうのに
何故笑って居れるのでしょう
死ぬのが厭でも死んじまうのに
僕も笑って過ごしてる

雪の中歩いてく
首まで埋まってもう歩けない
体が冷えていくのを感じながら
せめて頭が埋まるまで
唄でも歌おうと
覆水盆に返らず呟いてた

今までだって嵐や吹雪の中
歩いて来た
誰もが皆そうだったし
解る事は自分の事だけ
皆いつかは死んでしまうのに
何故笑って居れるのでしょう
死ぬのが厭でも死んじまうのに
僕も笑って過ごしてる

僕も笑って過ごしてる

*★*――――*★*

 『ばがでが』
田舎じゃ入って二年の
高校生が 子を孕み
どうする事も出来ずに
協会病院へ行ったと
子供堕ろして平気の平左
不審に思って病院が問い合わせて
ばれたんだと
学校止めて 今勤めてるんだと
ばがでが!

田舎じゃ結婚前の
娘子が 子を孕み
どうする事も出来ずに
便所の中で産み落としたと
子供捨てて平気の平左
ある日赤子がポッカリ浮かんで
ばれたんだと
仕事止めて 今 家に居るんだと
ばがでが!

田舎じゃ夜間に通う
大学生が 子を孕み
どうする事も出来ずに
部屋の中でこっそり産んだと
子供殺して平気の平左
押し入れの赤子の腐った匂いで
ばれたんだと
裁判所で 今 裁判中だと
ばがでが!

人の面した鬼共が
ホラ そこ ここに あそこにも
人の噂も七十五日を楯にして
好き勝手な事してる
ばがでが! ばがでが!
ばがでが! ばがでが!


自由詩 十九歳に書いた歌詞 Copyright 板谷みきょう 2021-09-26 14:26:20
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