近視
TwoRivers

現在、日本国内の人口の約1/3、4,000万人以上が近視と推定されている。
近視人口の増加はとどまる所を知らない 。
生活を取り巻く目を酷使する環境、パソコン・スマートフォンなどの長時間利用が主な原因である。

視力低下に歯止めをかける有効な手立ては現状見当たらないが、
もはや近視の状態が、正常な状態となっているのではないかとさえ感じる。
それはパソコン・スマートフォンなどを用いるための、物理的視力に関わる問題だけではない。
つまり「近視眼的な事柄を精緻に見極める力」
こそが、現在は必要とされているのではなだろうか。

SNS等で持てはやされる(いわゆるバズる)投稿は、
世の中の事象に対する近視眼的な正論が多い。
政治、芸能スキャンダル等、多くの人が間違っていると感じることに対して、
旬の正論を声高に叫ぶのである。

世の中を正そうとするその行為を、私は全てを否定はできない。
しかし、そういった人々が大切にするのは近視眼的な「今」である。
「今」は本来、未来に対する希望も包含しなければならないのではないかと思うのだが、
それは視界にすら入っていないのではないか。

例をあげれば限りないが、直近の例としては、
オリンピックで浮上した問題の数々。その度に叫ばれた正論の数々。
これらは果たして未来にポジティブな影響をもたらしのであろうか?
それがいかに正論であってもその行為の波及効果、
未来に対する影響を考えると、私は肯定することもできない。

かつて日本は太平洋戦争にて強烈な敗北を喫したが、
奇跡的な高度経済成長を遂げた。
そこでは確かに近視眼的な正論が無視され、
経済成長という大義名分の下に多くの犠牲も伴ったはずではある。
いかなる不正や矛盾も許容しない世の中は、
生きやすさと生きづらさが同居するが、
夢や希望が持ちにくくなったことは間違いないだろう。

私の裸眼視力は0.02。
虚しさを抱えながら上から目線で語ってきたが、
夢も希望を持てないと感じている私自身が、
近視眼的な視野に陥っていることを心のどこかで願っている。


近視人口の急激な増加・若年化
https://orthokeratology.jp/kinshi-increase/


散文(批評随筆小説等) 近視 Copyright TwoRivers 2021-09-26 13:59:20
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