十六歳の呟き
板谷みきょう

からっぽの心を手土産に家へ向かって歩く
雪がふわぁっていっぱい降って
皆と一緒に居たかった
ふと降っていたのが
ちぎれた雲なのに気がついた


日の当たる場所に座って
帽子を深く被って日なたぼっこ
目をつぶると
昨日が顔を出し優しく微笑む
そんなに昔だとは思ってないのに
いつの間にか遠い昔になっていた


太陽との戦いにそなえて軒下の氷の剣は
日毎 鋭くなっていく
そして太陽との争いが始まると
いつも決まって太陽が勝ち
氷の剣は涙を流しながら地面に落ち
粉々に砕けてしまう


僕は知ったかぶり
卑しい自分の心の命令を聞いていると
いつも気が滅入ってくる


夕日 影が背伸びしている


かくいどりは日和見主義者で
仲間外れだから
夜 飛ぶのです


小指に結んだ赤い糸
たどってみたくて 強く引っ張った
すると糸はプツリと切れた


中途で切れた蜘蛛の糸を仰いでは
いつ又降りて来るかと期待して
今度は雲の上に着いてから
下から追いて来た亡者共を
蹴落とすんだと考える


嘘をつくともとの木の人形に変わってしまう
悲しくて泣きたくなっても涙も出ない
ただ笑うだけ
本当はピノキオなのです


すがってみたって知らん顔
前に一度「狼が来た。」 って
言っただけなのに


雪が雨降リでグシャグシャになるのは
降ってる雨のせいじゃないんです
春が来るのがちょっと恐くて残念で
雨を見るとそれを思い出して
涙でグシャグシャになるのです


心の醜い亡者共
何処を目指してか
のらりくらり
遅くもなく速くもなく
のらりくらり
消え去れ 消えてしまえ
怒鳴るとそこに僕が居る


皆にはへつらい顔を見せておいて
心は折助根性でいっぱい


死んで居る
山を越え 海を越え
魚がいっぱい死んでいて
その中で死んで居た
ぬるぬるの中で死んで居た


自由詩 十六歳の呟き Copyright 板谷みきょう 2021-09-25 09:27:54
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