冬の朝のホットミルクみたいに
ジム・プリマス

小学生のころ一度、田舎の学校に転校した

転校して間もないころ、教室に一人で居たら

開け放していた窓のカーテンが風で膨らんで

担任の机に置いてあった花瓶が割れた

後で花瓶が何故、割れたのかと問われたので

起こったことをその通りに言ったら

太っていて意地の悪い中年の女性の担任は

僕の言ったことを頭から信用せず

「窓のカーテンが膨らんで花瓶が割れたんじゃと。」と

憎々しい口調で、僕の言ったことを繰り返した

おかげで僕は凄く嫌な気分になった

あとで一人の同級生の女の子が僕のところへやってきて

「花瓶割ったのT君じゃないよね。風のせいよね。」と一言、言って

また教室を出て行った。一部始終を見ていたらしい

その子のお陰で、僕は随分、救われた気分になれた

地味で目立たないタイプの、彼女の名前が

僕には分からないままだ

阿部寛さん主演の、古いドラマを見ていて

ふと、そんなことを思い出した

彼女の思いやりは40年以上経った今でも

僕の心を温めてくれる

冬の朝のホットミルクみたいに



自由詩 冬の朝のホットミルクみたいに Copyright ジム・プリマス 2021-09-10 18:16:26
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