冬の朝のホットミルクみたいに
ジム・プリマス
小学生のころ一度、田舎の学校に転校した
転校して間もないころ、教室に一人で居たら
開け放していた窓のカーテンが風で膨らんで
担任の机に置いてあった花瓶が割れた
後で花瓶が何故、割れたのかと問われたので
起こったことをその通りに言ったら
太っていて意地の悪い中年の女性の担任は
僕の言ったことを頭から信用せず
「窓のカーテンが膨らんで花瓶が割れたんじゃと。」と
憎々しい口調で、僕の言ったことを繰り返した
おかげで僕は凄く嫌な気分になった
あとで一人の同級生の女の子が僕のところへやってきて
「花瓶割ったのT君じゃないよね。風のせいよね。」と一言、言って
また教室を出て行った。一部始終を見ていたらしい
その子のお陰で、僕は随分、救われた気分になれた
地味で目立たないタイプの、彼女の名前が
僕には分からないままだ
阿部寛さん主演の、古いドラマを見ていて
ふと、そんなことを思い出した
彼女の思いやりは40年以上経った今でも
僕の心を温めてくれる
冬の朝のホットミルクみたいに