見分けのつかない分身
末下りょう
話しそびれてしまって浅い水路で風がわらう
ぼくたちのてのひらで火傷した蛙の
フリーズと
ラケットを肩にかけた生徒たちが
それぞれの家に帰る
ざわめき
夕映えを羽織るきみが振り向いて手を振った
田んぼ道
薄く黒ずんでいく地平線を背に
甦える体温をこぼしながら
遠く浮かび上がる足跡の先に見分けのつかない分身が
立っている
どこへ帰るの?
聞きそびれてしまって浅い水路でまた風がわらう
きみは誰かの分身のように遠ざかり
やがて見分けのつかない夜にいなくなる
自由詩
見分けのつかない分身
Copyright
末下りょう
2021-09-10 15:02:41