水影
こしごえ

水の惑星の縁に群れる雲は
答のない問いをささやき
そよ風といっしょに耳をなぜる

私は私の影なので
生き身は自然からのかりもの
魂は何とは言い切れない何かへとつながっている

雪国の
つの花の降りつもった層が解ける日和に
いずれどの道死はおとずれるのだから
しんみりと深呼吸

和室の深夜
オールド ファッション グラスにいれてある
水道水を口にふくみ終えたあと
円卓上で 愛用万年筆が さまざまな紙に告白をする
そうしてまわりまわって沈黙にいたる
せせらぎの遠さに
万有引力の気配がする
二度とない初めての朝をむかえれば
下弦の月に見つかる

無数の星を宿した宙はもはや
影の眠る墓
むかしむかしのおもい出
あえてよかった


気が付けば 言うことなし
と書いた
岸辺に立ち
悲しいことも 刻まれている
歴史のつづきを重ねて行く
あなたのいのちと


自由詩 水影 Copyright こしごえ 2021-09-06 07:07:41
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