春は闘争、
鳴神夭花

身の丈に合わない服を着てみて
この引きずっている感じが良いんだよ、と
大人ぶってみせた
わたしたちはもういない
スカートを折って丸めないで
シュシュで留めないで
靴下は真っ白で脹脛の半分くらいで
嗚呼 つまらない量産型
ぐるぐる回る十二時の時計が
今、壊れてみせた
この鞄はきっと鈍器になったね
あなたが笑った今日はもう何処にもないよ
大人になってしまった
少女でもなんでもなくなってしまった
この背中に
翼は生えなかった
合唱曲をわざと歌わなかったのも
屋上に忍び込んだのも
苦い煙草を必死に吸っていたのも
全部ぜんぶそのためだったのに

簡単だったね、

あなたは言って
電車は通り過ぎて

袖の長過ぎるセーターだけが
わたしたちの抜け殻みたいに
風にそよいでいた


自由詩 春は闘争、 Copyright 鳴神夭花 2021-09-03 02:16:22
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