朝日と少年のうた
秋葉竹



朝早くから
点滅の信号を少年が渡る

いつまでもそれを忘れてしまわないように
いまはまだ赤い朝日に向かい
息を弾ませながら

この街で
一番高い白い建物を見上げて
右手を伸ばして掴み取ろうとする
ものは、夢か?
希望か?
まだ見ぬ明日の自分自身か?

飛翔することを恐れない
空を駆け上がろうとする意志力


街の郊外の土道に咲く野の花は
白く小さくただ風に揺れている

風が花びらを揺らし
そして流れすぎてゆく

(耐えられない痛みを味わった過去)
(噂という風にも傷つけられた過去)

鋭い光が乱反射する川面を眺めながら
耐えられないことなどないと目を細める少年
傷ついたことなどないと光を睨みつける少年

朝日は少年を抱きに来てくれるだろうか?

朝日よ
朝日よ

そんなに真っ赤に照れてしまわないで

抱く愛情を恥ずかしいというのなら
そっと少年を暖めてくれるだけでも
それだけでも少年は前を向き
走ってゆけるのだけれども










自由詩 朝日と少年のうた Copyright 秋葉竹 2021-09-02 16:19:34
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