鈴蟲寺
SDGs

残りの夏にかざした
みずいろの日傘をたたみながら
あのひとは言った
すでにそこに来て待っている
自分に逢いにゆくのです と
そうして
疲れたようなはじらいをのこし
鈴蟲寺の石段をのぼっていった

草ふかい九月の
廃寺の奇妙なあかるさのなかで
ものとこころが約束されていたように
かさなりあう姿が眼に浮かぶ・・・
だが あのひとは
うまく自分に逢えたのだろうか
いつまで待っていても もう
おりてこなかった





自由詩 鈴蟲寺 Copyright SDGs 2021-08-29 11:08:10
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