お彼岸
宣井龍人


卒塔婆を飾る花は何を思う
墓石の影に折り重なり寄り添う人々
7年前の貴方13年前の貴男だろうか
歳月は姿なく容赦なく降り積もる
人々はもうすっかり汚れてしまって
絢爛に咲き誇る花々は一時の華
西に大きく傾く残り火に輝く


高層ビルの病室の夜景は都市部の見慣れたものだ
辛い病の疲れは意識を薄雲から闇に導く
時間と闇の調和の中を
多くの見知らぬ人達の姿や声が往き来する
目の前に幾多の顔が現れ消え現れ消え
親しい友人のように私に話しかけ
答えぬうちに消えていく
意識だけの存在になった私は
再び闇に帰る


病室で独り
月と太陽を同時に見ていた
興奮と鎮静が
足元で引きずり込もうとしていたとき
荒い息と吹き出す汗に
何処からか冷たい波が忍び寄る
凍り付いた無音の感触に
体は背後から硬直する
感性だけが支配する空間に私は
確かに閉じ込められた
おまえは誰だ…


私は外を眺めている
ピアノの前の椅子が定位置
動くことも
声を出すことも
表情を変えることも
許されない
何時だったか
何時ものように
目覚めるとここだった
家族もみんないるよ
各々の位置から
閉じない視線を微かに浴びる
誰も何も動かない
虚ろに響くのは
正確過ぎる時を刻む音だけだ


自由詩 お彼岸 Copyright 宣井龍人 2021-08-26 23:41:17
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