美しいけむり、あたらしい死刑
竜門勇気


君は燃える泣き声
僕を探しているよ
どこで聞いたのか
僕の部屋の周りをうろついてる

誰が考えるのか
どこにもいないものを
探し続けて老いていくなんて
変で愉快なアイデア
”火を消して”泣き声はそう聞こえる

そこら中に
ゴミを撒き散らして
そうやって生きていく
このままじゃ
お互いに灰になると
なにに抗ってんのかわかんないまま
吸い込んでる
美しい煙とあたらしい気配

足音ですぐわかる
君はサンダルはいて出てきた
何時間もそうやって歩いてる
カップの中のコーヒーが燃え上がり
うろたえてる間に自分の指先にもそれが始まってることがわかって

”空気が燃えている!”
”机が!本が!フルートが!”
でも思い出してごらん
そんなもん君は愛したか?
長く伸びた爪が燃える
黒く泡立って
黒い煙を上げる

神様を感じるだろ?
チェストの中とかから
すべてが一転して
取り返しのつかないなにかが起こる感覚
それは今生まれた赤ん坊じゃないぜ
産み落とし捨てたことへの逆襲だ

”火を消して”そう聞こえるよ
本当だ
僕には
でも違うよなそう聞こえるだけで
本当は何をして欲しかったんだ?

君は燃える泣き声
どんな僕を探しているんだろう
いろんなやつがいるからさ
部屋を何度ノックされても
誰で会えばいいのかわからない

どんな僕に会いたいのか教えてくれ
いつも楽しいハイなやつ
いただろ?とかって
まあなんせよ出直してくれ
ここには会って楽しいやつも
優しいやつもいない

お前たちが押し付けたゴミの中で
シチューみたいに酔っ払った僕に
用があるときだけ訪ねてくれ
こんなときには誰も会いたくないんだ
特にゴミだらけでシチューみたいに酔っ払った
燃え上がる悲しさには




自由詩 美しいけむり、あたらしい死刑 Copyright 竜門勇気 2021-08-26 22:57:03
notebook Home