晩夏
山人

失われつつある夏の日差しをむさぼるように
虫はうるさく徘徊し最後の狂いに没頭する
夏の影は次第にゆがみながら背骨を伸ばし
次の季節の形を決めてゆく

夏、それは誰もが少年であり、少女であった
切ない疼きのようなものが春を知らせれば
夏はそれはあらゆるものを開花させていた季節
まなざしは汗でひかり
それを晩夏の風がさらう

みんなが生きた夏
夏は終わるという

古い砂防堰堤の濁った水の上を
水鳥たちはいっとき憩い
葦の生い茂る闇から力強い羽ばたきで飛び立つ
研ぎ澄まされた諦めの瞬間
やさしく晩夏は
けなげに時を潤した


自由詩 晩夏 Copyright 山人 2021-08-25 20:28:29
notebook Home 戻る