送り火
藤原絵理子
ともした線香の香りが連れて行く
どこかへ行ってた盆の夜
鏡を見れば どことも言えず
いとしい人の面影がよみがえる
今生の人よりも はるかに多い
過去の死者と 未来に生まれてくる者たち
いつか終わりの日まで 繰り返す
四季のうつろいの輪がいとおしい
病気でも爪は伸びるのね
淋しく言ったあなたのつめを切った
心地よく 元気だった頃の音ひびかせて
炎は護摩木の肉を燃やして
ふわふわ浮遊する白い骨を残す
慈愛も苦悩も欲望も 空に放って
自由詩
送り火
Copyright
藤原絵理子
2021-08-18 23:45:20