夏の自称詩人
花形新次

鶴見川に沿った道を
ゲリラ豪雨の中
自称詩人が「わーっ!」と
叫びながら駆け抜けて行く
八月の狂詩曲の婆さんのように

しかし追いかけて来る家族はいない
家族それぞれは
自称詩人が溢れた川に流されて行くことを
静かに祈り続けている

自称詩人は何故
叫び、走っているのか?
自称詩人は
「奴等はもうそこまで来てるんだあ!」とか
「奴等の狙いは人類の鼠径部なんだあ!」とか
訳の分からないことを口走っている
とうやら何者からか逃げているらしい

やがて自称詩人は
濁流に巻き込まれるが
川の流れに逆らいながら
400m個人メドレーで上流を目指す
奴等から逃げ切る為に

「アレさえいなければ・・・」
家族の願い虚しく
自称詩人の夏は終わらない


自由詩 夏の自称詩人 Copyright 花形新次 2021-08-14 10:07:11
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