世界中がロックダウンされた今夜、たった一軒だけ開いているバーで
TAT
君は良いことがひとつも無いって
生きていても辛いだけだって
そう嘆くけど
それは当たり前の話
だって
「しめしめ。アイツから奪ってやろう」
と考える奴はこの世にゴロゴロいるけど
「しめしめ。アイツを幸せにしてやろう」
と考える奴はまぁ居ないからね
生肉を掲げながら
ジャングルを歩いていたら
何故だか不幸にもライオンに襲われました。
ってゆわれても、、、
悪いことは放っておいても向こうから次々とやって来るけど良いことは自分で種蒔きして仕込んでおかないと基本的に来ないんだよね
最終病棟で人は死ぬ前に
「ああ。なんでもっと自分を幸せにしてあげなかったんだろう」って泣くらしい
そういう人が多いという話だ
生きる事は基本的に地獄で
その地獄を何とかやり過ごす為に
僕らは
金を貯めたり
酒を飲んだり
人を愛したり
家族を作ったり
天職を猛進したり
国を転覆させようともがいたりする
あぁあと
詩を書いたりね
全てモルヒネだ
だから君みたいに
生身で歩いてたら
そりゃそうなるよ
だが忘れないでいてほしいのは
戦場を武器ひとつ持たずに
裸足で往く君は
掛け値なしで美しい
という事実だ
その事は誇らしく思ってもいいよ
いいかい
地位とかお金とか名誉とか
そんなものは刺身のツマ以下で
いつまでも忘れてはならないのは
君が君の愛する人のために出来る
最高の事は
究極的には
君が幸せである事以外には
なにも無いという事
自分は死ぬけど血のついたこのお金を遺しますのでとか言われても君を愛している人は喜ばない
君はまずそれを知るべきだ
そういって男は
紙巻き煙草に火を付けた
グラスの中の氷が
おとなしい猫のように
小さくカランと鳴いた