帰りたい
藤原絵理子
帰らなきゃ
ずいぶん長い間歩き続けて
いくつもの分かれ道を
悩みながら選んで来たけど
ここには何もない
帰らなきゃ…どこへ?
分かれ道で選んだのは
安直なリスク回避をしただけのことで
目の前に現れる岩を避けながら
川に流されていただけと知る
それでも年を経れば
陽だまりの老婆になって 微笑みながら
行く雲を眺めていられると思っていた
海へ出て跡形もなく
それを運んだ水は雲を結んで
ふたたび山に帰るけれど
あたしにはもう帰る場所はない
自由詩
帰りたい
Copyright
藤原絵理子
2021-08-05 21:20:19