夏は
藤原絵理子
茶色く疲れ果てた蔓の途中で 朝顔の紅は
夏の追憶の中に留まろうと もがいている
枯れ急ぐ葉に抗う 小さくなった花は
冷えた朝露に濡れて うなだれる
永遠への憧れは たそがれて切なく
胸の底に沈んで 上澄みはうす青い
高く遠くなった空は 広すぎて無関心に
風を吹き降ろす 枯葉を転がす 空蝉がしがみついたまま
陽の光は力なく乾いて
二度と戻らない季節を撫でる
輪廻は求心力を拒んで 螺旋を描き始めた
白っぽく干上がった ヒガンバナが
芽を出すこともない実をつけて 揺れている
朝露はとうに消えてなくなった 昼下がり