妹よ
末下りょう

妹よ 夕暮れの卓袱台にまごころがなくなり説得しか残らないのは淋しい
りかいしないままりようしようとしないでおくれ


日がな
海水浴に
明け暮れる
まだ胸のない妹よ

淡水学派と海水学派の浮き輪の光にかすむ妹よ


息つぎもせずにクロールする弟がやがて犬かきしだす姿を眺めながら
インフレのような浜辺の
海の家で
スカイブルーの氷を
前歯でけずる

金のない兄を優遇するビーチはやがて 跡形もなく滅び 招き猫は海の砂に埋もれ 耳障りのいい波音だけが寄せ返す
肌を黄色く輝かせる者にしかみえないという
虹の
皮を剥いだ
妹よ


フナムシが走る岩陰で うでのない子消しを抱きしめる妹には
まだ口紅とピン札はいらない


自由詩 妹よ Copyright 末下りょう 2021-07-26 12:52:07
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