アートのはじまり
秋也
白いTシャツに焼けた素肌
まだまだただの女の子
背より大きな半切の半紙の端
ギリギリを指で摘み
ゆっくりゆっくり指ギリギリまで
半紙を墨汁のバケツに浸していく
破れないように気をつけて
そっとブルーシートの上に置く
べちゃ
巧くできた
摘まんでいた部分の白がほんの少しほんの少し残り
女の子は少女であり女性でもあり老婆にもなった
「ねえ、お母さん見て白がこんなに綺麗なの」
白いTシャツに大きく撥ねた墨汁が最高に格好いいんだ
だって君そのせいで、ママに怒られても笑顔だろう
とびきりの作品
超絶のアーティストだよ
白ってさあ、色ってさあ、本当綺麗なんだよな
描かないって奇麗が目を覚しちゃうんだよね
誇らしい夏の一コマはとても暑くて
蝉がやっぱりうるさくて
白い入道雲も指で守り切った半紙の僅かな端の白も
凄く凄く白かった