箱庭
妻咲邦香

忘れないために生きているのかもしれない
忘れるために生かされているのかもしれない
知ることは悲しい
知ることは恐ろしい
夜と朝だけがある
あとは私たちが勝手に作り出したものだ
その手をかけた扉が
優しく貴方を出迎える
貴方は待っているものに出会う
それ以外は必要ない

だからもう
笑わなくていいんです
遺された世界は十分満たされて
私たちはまだ
見つけられないものを探している
それだけなのです
光になってしまう前に
本当の貴方に出会いたかったと
悔やみながら今も
そして

忘れるために生きているのかもしれないし
忘れないために生かされているのかもしれない
いつか戻って来る日のために
思い出を置いてゆくのです
この地に誰もが
今日という日とともに


自由詩 箱庭 Copyright 妻咲邦香 2021-07-16 23:11:29
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