箱庭
妻咲邦香
忘れないために生きているのかもしれない
忘れるために生かされているのかもしれない
知ることは悲しい
知ることは恐ろしい
夜と朝だけがある
あとは私たちが勝手に作り出したものだ
その手をかけた扉が
優しく貴方を出迎える
貴方は待っているものに出会う
それ以外は必要ない
だからもう
笑わなくていいんです
遺された世界は十分満たされて
私たちはまだ
見つけられないものを探している
それだけなのです
光になってしまう前に
本当の貴方に出会いたかったと
悔やみながら今も
そして
忘れるために生きているのかもしれないし
忘れないために生かされているのかもしれない
いつか戻って来る日のために
思い出を置いてゆくのです
この地に誰もが
今日という日とともに