千年風化
帆場蔵人
Ⅰ
いつか風のあきらめが訪れた
としても僕らが滅びたあとで
なにも伝わらないから頬をつたうのだ
アーガイル柄の床の軋み
骨格があちらからこちら
誰だってそうなんだろう
標本になるまで踏まれた
現実にだれもが宿を借りているから
マンホールにだれかがそこにすんでいて
ホールケーキが齧りすてられるばかり
あきらめと痕跡、喰い散らかされた葉っぱ
からのぞく水玉模様の水たまり歩く蝸牛は
忘却に閉じたまなじりを二枚貝のかたわれ
が偲んでいる、砂のなかはあたたかすぎた
Ⅱ
ひろいあげてください、ふりはらいながら
そのしろさがかなしみの測量なんだって
どこにもかかれてないことわりばかり
頬にふれた風はいつから現実に宿っていたのか
ここからそこ、あちらまで、どこまでだろうか
きっとはかりかたをわすれてたちつくしている
傘はない割れた皿からもれおちていく
そんなものをうけとめるためよりも
りょうのてのひらにはめがやどって
ぱくりぱくりひかりもやみものんだ
そして見上げていた
風よ、もう傍らで
ねむればいいんだ
お前の手触りは犬に似て猫に似て
どれでもない、はざわりの音たち
傘はあった骨の折れたしがないね
Ⅲ
千鳥格子に水の回廊が
千年をかけて築かれたそうですよ、骨が折れ積みあがり
書き殴るまでもない
なぶられたことばゴミ箱をゆりかごにして
うえからしたへしたからうえへ
せせらぎ死に水を横流しする奴ら
その痛みまで横取りするな、散れ
(ひろいあげてください、ふりはらいながら)
きょうからあすへあしたからきょうへ
きのうからおとついへみずのかいろう
だれもがせんねんをいきわすれたから
おしえてあげてください、なにもかも、わすれて
Ⅳ
それでも、あきらめはこない、風骨の琴線をさぐろう
Ⅴ
わすれさられた椅子はしあわせだ
しあわせで泡のようにはじけても
帽子をかぶっていてもすきにして
ストライプだ水玉だって寝そべり
終わりの日と待ち合わせしている