サンデー・モーニング(ダンス)
ホロウ・シカエルボク


おまえはやわらかなうたを抱いて

音のない振幅をくりかえす

サンデー・モーニング、ディランは60年代のまま

新しい世紀にまた産声をあげる

高圧電線のそばで甲高い鳴声をばらまく鳥たちには

きっと終末の景色が見えているのだろう

トーストとコーヒーを胃袋にとどけながら

人生の最期の食事はきっと

こんなものになるんじゃないかなんて考えた

そこにどんな気分も存在しなかったけど

それは取れない腫瘍のように心臓まで沈み込んだ

夏は光の沼

すでに溺れかけている

13日の金曜日、一作目を見たことがある?

野暮ったい映画だけど

ラストのクリスタル・レイクが残酷なほどうつくしいんだ

おれは夏になるとあの光景を思い出す

まるで自分があのときそこに立っていたかのようにね

ジェイソンは存在する、だれの心のなかにだって

でなきゃスプラッタ・ブームなんてなかったはずさ

朝食が消化器官で搾り上げられて断末魔の声をあげる

おれは排水管の詩が書けないかなどと考えている

ニュースは病的なまでに今日の感染者数を報じ

医者だの政府だのの見解をくりかえす

人間はふるいにかけられるんだ、いつだって

肺はきれいにしておくべきだよ、こんなときじゃなくてもね

路面電車がけたたましい音を立てる

「皆様おはようございます、公共交通機関でございます」

おれにはやつがそう言っているみたいに聞こえる

長すぎた眠りの気怠さと

脳味噌にハリ治療を施すインスタントコーヒーのカフェインが

「さあ、目を覚ませ、表に出て新しいことを始めよう」と叫ぶ

ダンス、だったっけ、あの曲

朝食の皿をキッチンに連行すると

その日の予定はなにもなくなった

つまりなんだってやっていいってことさ

おまえ、いまなにしてる?

イエー


自由詩 サンデー・モーニング(ダンス) Copyright ホロウ・シカエルボク 2021-06-20 09:20:58
notebook Home