境界線
こたきひろし
子どもと大人の間には境界線ががあると信じていた
それを踏み越えなり限り大人にはならないだろうと信じていた
子どもと大人の間には河が流れていてその上にかかる橋があると想像していた
少年は自然な身体の変化に戸惑った
そのあらわれとして性的興奮と欲求が度々襲われるようになった
海綿体が充血し勃起すると射精したい衝動を抑えられなくなった
それをいかにコントロール出来るようになれるかが、子どもと大人の境界線になるような気がするようになっていた
誰に教わる事なくマスターベーションを覚えた
反面
そんな自分の身体にひどく嫌悪した
大人になりたくないと感じた
受験勉強の夜も性衝動は襲ってきた
受験勉強の遅れの不安感よりも遥かに上にあった
母親にそれを悟られたくなかったが、たまに下着を汚してしまう事があった
洗濯かごに入れる度にびくびくした
子どもと大人の間には境界線があると思っていたが
今となってはそれがどこだったか皆目わからなかった