離島の夏
梅昆布茶
離島に夏がくる
隣の猫は人間になりかかってきた
この忌まわしい季節には
神経節細胞の痛みだけが秩序ある情報なのだ
ぼくの離島は温存されて
真夜中に大陸とひそかに交信する
部屋のAI扇風機は
サブルーチンの迷路で
実行されない約束事を
ぶつぶつ語りながら風をつくり
ぼくは太古の乗り物の手入れをしながら
楔形文字の粘土板を整理しなおしてゆく
ときどき離島には海風と入り混じった
上海やニューヨークからの花の種がやってきて
持ち主もない空き地のようなこの島の叙情となり
いつの日にかは風化して行くばかりなのだが