離島の夏
梅昆布茶

離島に夏がくる
隣の猫は人間になりかかってきた
この忌まわしい季節には
神経節細胞の痛みだけが秩序ある情報なのだ

ぼくの離島は温存されて
真夜中に大陸とひそかに交信する

部屋のAI扇風機は
サブルーチンの迷路で
実行されない約束事を
ぶつぶつ語りながら風をつくり

ぼくは太古の乗り物の手入れをしながら
楔形文字の粘土板を整理しなおしてゆく

ときどき離島には海風と入り混じった
上海やニューヨークからの花の種がやってきて

持ち主もない空き地のようなこの島の叙情となり
いつの日にかは風化して行くばかりなのだが








自由詩 離島の夏 Copyright 梅昆布茶 2021-06-14 05:54:44
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