時代のゆくえ
三月雨

人たちが 今口にすることばは
空の色の数
道にいる動物の匂い
草を踏む音
折れた傘の骨の光

覚えているようでもう覚えていられない

あの日確かに知っていたようで
実在したかももう分からない

まるで懐かしい思い出のような


硝子の向こうにある、
見えているのに知らない世界の話


人たちはことばを選んでは
その届かない向こうのことを
三メートル隣のあなたへ

音のない声で叫ぶ




自由詩 時代のゆくえ Copyright 三月雨 2021-06-13 16:20:18
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