街燈
板谷みきょう
村はずれの一本道に、その街燈は立っておりました。
北風と雪にさらされ、寂しく立っておりました。
ある青白く凍える晩に、月が雲の陰から顔を出して
「寂しいか。」と言いました。
街燈は、雪の下の草花を想い、雪道を照らしながら、月に言いました。
「私は、暗い夜道をこんなに照らして、人の為になっております。どこに寂しさなどありましょう。」
そうして、夜道をなお一層明るく照らし続けておりました。
「通る人など、居ないだろうに。」
月の言葉に、街燈は何も言わずにおりました。
ただ、先程よりも更に明るさを増して、佇んでおりました。
街燈の下が、昼間のように明るくなった時に
空から降りてきた雪が、気付きました。
街燈は、泣いていたのです。
気付かれないよう声を殺して、静かに涙を流しながら、無理して、いつも以上に明るく、夜道を照らしたのでした。
雪が、声を掛けようとしたその時です。
パチッ!と小さな音がしたかと思うと、街燈は消えてしまいました。
―――何と静かな夜でしょう。
雪道を照らしているのは、月の光だけです。
雪は、街燈の気持ちを想って、明るくなるように精一杯、白く輝くように努めたのでありました。
消えた街燈に、あかりが灯ったのは、それから、何か月も後の、雪の消えてしまった翌年の春のことです。
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