パントマイム朱線
あらい

               錦織り成す細石に思いを馳せる

  少しばかり避けたカアキのスカートの依り代から、
黄泉の底が溢れている。
     痴れを紡いで路肩に色の納める、
         死神たちの養生処には決まって
            愛の亡い、
            真実を受け入れる空の器が潜んでいた。
「見上げなさい」
        と黒い羊が毛刈りを致されている 
            夏のさかりの香りがする
      花火が満開に咲き誇っていらっしゃる
    硝子戸の天秤は永遠を鳴らす時計のように、
             振り子を強請っていた。
(絶、
  滅) を垂らしている、
   包帯の蔭で、延ばしてしまった黒髪を売り捌く
     幻肢痛のような、(~心が)逢ったような無かった様な
筆圧だけの痕跡の未知。
    < あなた。
       それでいて、
        へぬるいものに、
      いまだ、
       だかれているの >
   嘴のキイロイ三角関数は、
      あなたにとって恋いをしている。ばかりの、暈です。
               *
           氷雨虹はお道化ていった
            この頬を潤すばかりに!
           この身を融かすばかりに!
       無言劇の奥に一筋の光を堕として
         なんと叫べば届くのであろう。
               *
前略 
  +αへ
    これが今自分が抱えている夢であると
      言い聞かせれば他愛もない
        かけらたちの煌きに装うのも、あれであるが。
         きれいごとなんてひとつもなかった
ぬかるみに押しつぶされそうな未来を踏み固めるように、
ひとつひとつ、
視線を
外している。ピン止めされた写真がぼやけるさまを、
      ビン留めされる写真の枠に、
            なにか 痛々しい ように
日々がボヤけていくように 願い祈りは域を潰して
          瓶詰される活版のヨゴミは、
          可不可  微笑ましい ような
          楚々がボヤけていくように 
              願い祈りはいきを殺して
                  緑の中、縁の外がわを
                  奔り廻る思い出たちが、
  使い古された手足で契る、ぬけがけばかりのアンコール。に!
   今はナマズのようなてゐで、少し冷たい影に追いかけられる
     道標を背負い 初夏の日差しに焼かれるばかりに、
               梅雨の前触れが微か匂った。


自由詩 パントマイム朱線 Copyright あらい 2021-05-30 16:00:57
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