老師の話
ホカチャン

僕が坐禅会に通っているお寺の老師の話です。
「高校の教師をしている時の話です。2、3年勤めたら管理職から学級担任をお願いします、と言われました。それで、高校の教師を長くやっている親戚のオジサンにアドバイスをもらうために出かけました。するとオジサンは、一言毎朝一人一人の名前を呼んで出席をとりなさい、とアドバイスしました。へぇ、そんなものかと思いましたが、いざ1学期がスタートしてみると、なかなかこれができません。10分間の朝の会は、連絡などですぐに終わってしまいます。そうこうするうちに一度も一人一人の名前を呼んで出席をとることなく1学期が終わってしまいました。また、忙しい中でこんな面倒くさいことをやる必要があるのかな?とも思いました。夏休みにまた親戚のオジサンの家を訪問する機会がありました。オジサンに会うと出席はとっているかと聞かれました。実は忙しくて一回もとれなかったというとオジサンは、そりゃいかん!と言いました。オジサンがここまで言うのには何か訳があるんだろうと思い、どうすれば出席がとれるか考えました。そしてチャイムが鳴る前に教室に行っておいてチャイムが鳴ったらすぐに出席をとるようにしました。しかし、何回やっても時間がかかるだけで生徒たちも何でこんな面倒なことをやるんだろう、と心の中で思っているようでした。しかし、そう思いながらもせっかくのオジサンのアドバイスですから、毎朝一人一人名前を呼んで出席をとることを続けました。するとだんだん返ってくる生徒の返事の変化に気づくようになりました。いつもよりも元気のない返事をした生徒がいると、後でちょっと廊下に呼び出して、今日は元気がないね、どうしたのよ、と聞くようにしました。すると今度部活でレギュラーをはずされたんです、とか夕べ親と口喧嘩したんですなどと話すようになりました。また、いつもよりも元気のいい返事をする生徒も後でちょっと廊下に呼び出してどうしたのよ、今日は元気がいいね、などと聞くようにしました。そういうことをやっている間に私と生徒との関係が急速に近づていくようになりました。その後、このクラスを高校三年まで受け持って、卒業する日まで毎朝一人一人名前を呼んで出席をとることになりました。」
仏教用語の「挨拶」の話をされた後に、ご自分の経験をお話しされました。日々の小さな実践が大事なんですよ、と教えられたのかなと思いました。


自由詩 老師の話 Copyright ホカチャン 2021-05-29 15:03:14
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