河を渡る
塔野夏子

蒼ざめた霧が流れる
旗は透明

静止
巨きな空虚

渡るべき河の音

静止の中を
巨きな空虚の中を
いくつもの星が通過する

見える星
見えない星

蒼ざめた霧のつめたさ

静かに歩きだす
透明な旗のふちが
仄かに遊色する

渡るべき河は近い

祈りではなく
祈りよりもまっすぐに
立ちのぼる何か

巨きな空虚の底に
灯るあらたな覚醒

この河を渡る
見える星も
見えない星もついてくる

向こう岸を知らない
けれど
この河を渡る

透明な旗をかかげて
あらたな覚醒を灯して



自由詩 河を渡る Copyright 塔野夏子 2021-05-29 11:52:57
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