チョコレート・ブザー
竜門勇気


ペダルを踏む足を止める
鳴るブザー
鳴るブザー
チョコレートの音

左の音を聞いてる
ドアを叩いてる
華奢な手
力はこもっていない
義務だから叩いてる
そんな音だ
ブザー、ブザー!
出てく必要なんてない

右の音を聞いてる
服を広げてる
ハンガーをいくつも
床に落としてるみたいだ
目当てのシャツは見つからない
どこに出かけることもできない
ブザー、ブザー!
テレビの電源
難聴になりそうな音量

空腹がぶっ壊れていて
何も食べてないとおとぎ話が始まる
頭ん中で

おとぎ話がぶっ壊れていて
何も食べてない奴らの物語が始まる
耳と耳の間で

不思議な骨が彼女の祖母でありました
お祖母様、お祖母様!
テレビの中で私はああ、無残に食べた、豊かな
あなたが私の黄金でありましょうから

空回りしながら
物語が僕を巻き取って消えようとしている
ブザー、ブザー、シャツにこびりついた茶色いブザー
甘くて少し昔を思い出させてくれる
そんな味がするんだ、きっとな
車輪が回る
どこにも触れないまま



自由詩 チョコレート・ブザー Copyright 竜門勇気 2021-05-28 11:05:28
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