ゆっくりと解凍する日々のうた
梅昆布茶
僕のぽけっとの紙片には
最新のもっとも無駄な解答が記されている
人生に必要なものの殆どが木箱にしまわれて
博物館の収蔵庫の奥深くにおさめられているとしたら
菫や蓬の花のように路傍にさりげなく
ささやかな展示場を設けてくれないとしたら
僕の胃袋はからっぽで遺伝子は誤配列のままで
僕の頭は冷たいカフェオレの缶のようなものなのだろう
僕の舌のさきは凍結した氷柱のなかのことばを溶かそうと
電気ポットで淹れた一杯のコーヒーを飲みながら
永遠に満額回答を待つ宇宙船の乗務員のように
収支が細かに印字されたレシートをまた一枚綴るように
あるいはコックピットにベルトで固定された山羊に似て
日々のチューニングを模索しては病室の窓から望む世界を
分散和音で淡彩化してしまおうとたくらんでいるばかりなのだ