ユスリカ
花形新次

誰もいない部屋の
片隅にある写真
女は若く
俺も若い
確かに1/4世紀過ぎたのだ

時間は相対的だというのが
本当ならば
俺の時間は長い
砂丘で作った巨大な砂時計

夭折した者たちを思う
若くして死んだ男や女は
濃縮された生が
彼らの時間を充足したのだ
たとえユスリカのように
短い生だったとしても

俺の時間は
長い訳ではないのかも知れない
ただ、生の密度が低いだけなのだ

写真立てを倒して
カーテンを開ける
今日も雨が降っている

すべて雨のせいだ


自由詩 ユスリカ Copyright 花形新次 2021-05-22 08:08:03
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