gogogo!
竜門勇気


柔らかい衝立に
僕らは遮られていようよ
遮断されて繋ぎ止められて
go,go,go
勝手にとっちらかって死んでいくのさ

豚の形の貯金箱
ポケットの中身は空っぽで
僕らの頭の中もおんなじさ
巻き散らかされたクソ
腹が減ってるどうする?
go,go,go
勝手にとっちらかってるんだ
死んでいくんだ

爪を切るために
今日は休みをとったから
夜まで遮られ続けていよう
諦めたものをコップに入れて
そうじゃないものを薬缶に詰める
日がくれたときに台無しになるように
新しい知り合いを家に呼ぶ

時計はどこ?
時間はどこ?
この世の終わりみたいに僕らは酒を飲んだ
記憶は失われたが何かがあったことは確かだ
僕らが血まみれで目を覚ます時
誰かがこの部屋で刺されたってわかる
なにかになんなよ
なにかになんかなんないよ

あの変な音
音だから、聞こえたみたい
打ち明け話みたいに聞いた
打ち明け話は音だ
だから聞こえた
go,go,go,進むんだ
とにかく、なんであれ

芝刈りにさ、彼女はでかけた
わかるか?仕事なんだ
役割なんだ
それで、僕は川に行ったんだ
まったく鼻の奥まで血の匂いがしてたまらなくて
水の中に顔をつけて親指で右の鼻を押しつぶして思い切り水を吸って
川面に水を吐いた
生き物みたいに赤い血が糸を引いて流れてった
多分彼女は帰ってこない
どのみち一緒にいたってしょうがねーだろ
息を吸い込んで水の中に顔をつける
左の鼻の穴を親指で潰す
思い切り水を吸う
涙が出た
家にある食べ物を全部食べたみたいに気持ちよかった

go,go,go,
go,go,go,
家にある服を全部捨てるみたいに
go,go,go,
go,go,go,
家にある椅子に全部座れたみたいに
go,go,go,
go,go,go,
家にある楽器が一度に鳴ったみたいに

あの変な音ね
音だから聞こえたみたい
聞こえるから解っていられたみたい
でももう聞こえない時間のほうが長くて
だからもうわからないの
ときどきわかるからわからないことより
もっともっとわからない
そうでしょう?わかるでしょう?
go,go,go
go,go,go
あの変な音な
あれ、音だから聞こえるんだよ
音って聞こえるんだ
そう出来てるんだ
とにかくさそういうもんなんだ
聞こえない?じゃああれな、音じゃないんだ
音じゃないから聞こえなくても
変じゃないさ
ときどきわかることだけ覚えとけな
わからないことは、音じゃないよ

ナイロンや繊維
思い込みでできた構造は
ひびが入るまで見えない
どっち側にいるのかわからない衝立を挟んで
退屈な騒動を見せあってる
僕は君が好きだぜ
僕らは後ろめたさでかつてやった
非対称な取引を台無しにしたがってる
背中ならどれだけ汚しても大したこたねーと思ってる
これからずっと前だけ向いて生きてけると思ってる
go.go.go.
go.go.go.
死にぞこないはきれいに生きれる
終わってる者同士うまくやろう
振り返るなよ
そんな暇があるなら手でもつないでくれ

後ろにはもう誰もいない
クソにまみれた背中を笑うやつはいない
ここが終わりだ
go.go.go.
go.go.go.


自由詩 gogogo! Copyright 竜門勇気 2021-05-20 23:26:55
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