夢と夜風と雪山と
ひだかたけし
夜風がすぅすぅ網戸から
入って来ては肌を撫でる
その微妙な心地よさに
うっとりしている午前三時、
電車は大通りを走り雪山へ
凍り付くよな身震いを
誘いぐんぐん進んで行く
鈍色空を背景に
白銀の峰が連なって
その威容を放っている
私は暗い車道を
猛スピードで進む電車の中
只只圧倒され微動だにせず
ゆっくり移動していく白銀の
峰を見つめ続けている
(夜風がゆるゆる肌を撫で
意識は半分目覚めながら
半分の意識は夢見ている
そんな不思議な状態が
圧倒的な畏怖の念に包まれて
柔らかな心地よさに包まれて)
やがて電車は猛スピードで
暗い公道を走り続け
白銀に輝く巨大な山塊を
ゆっくりゆっくり後にして
緩やかに吹く風とともに
跡形もなく消え去る