雲のような存在
水宮うみ
本のなか文字のひろがる風景で存在しない曲を弾く人。
きみの黒い髪が宇宙みたいだった 青い景色に浮かんで見えた。
火のように月日はもえて土になり金いろの木に水をやってる。
紙を折りたたんでできる折り紙のお話が折りたたまれてる紙。
写真越しに出会って初めてあなたとはもう出会えないことに気付いた。
思い出が写真みたいになっていく 物質的な過去の感情。
人間の可能性は無限大で羊や雲が無限に出てくる。
きみの瞳のなかへすいこまれていった青空、宇宙のそとにある星。
ツメのようなつめたい月が 悩んでる脳と心に地味に沁みる夜。
すれ違う人たちのこと野に咲く花みたいに善良だと感じてる。
桜が散るのが先か雨が降り止むのが先かが問題だった。
十年後ようやく分かったような気がしたあの人のあの日の気持ち。
間違いも敵も味方もない町で草木の隣を歩いていたい。
その顔もぼんやりとしか見えなくて 脳はことばを組み立てている。
人ごとに違う世界がみえていて世界に会うたび誰かを知った。
何かをまた眼差しが考えるから、空は閉じずに変わっていくね。
昔読んでよく分からなかった小説が、今もよく分からないまま本棚にある。
あなたの笑顔があなたと出会うために光の反射があったんだ。
きっとこどもだった頃の月明かり。つないだ右手はざらざらしていた。