北星余市の10期だもの
板谷みきょう

学園祭で土井ちゃんは
ギターの弾き語りで出演して
松山千春の「銀の雨」を歌い
喝采を浴びたのを横目に見ながら

そんな風に歌うことは
格好悪いことだと信じて
疑わなかった
だから
雑巾モップの柄を持って
ガチャガチャ鳴らしながら
ボクらは四人で
チューリップの「心の旅」を歌った

翌年の学園祭では
やっちゃんらと
深夜放送で流行っていた
「天才、秀才、ばかシリーズ」を
寸劇にしてボクは
三段落ちの「ばか」を演じた

そして
最後は出演者全員で
「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の
ギターリフを
手拍子をしながら口ずさむ

それに合わせて
ボクは、飛び跳ね踊り
終演のはずだった

エンディングをやっちゃんは
ボクに託してくれていた。

みんなは、知らなかったのだ

ボクが誰にも言わず
その為に
内緒で競泳用のビキニパンツの上に
五枚もチェックのトランクスを
重ね穿きしていたことを

「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の
ギターリフを全員で口ずさみながら
手拍子が鳴り響く中
ボクは服を脱ぎ始めた

パンツを脱ぐ度に
体育館内は悲鳴と溜息が
聞こえていた

学園祭は騒然となりながらも
幕が引かれた時には
ボクは海パン一丁で
飛び跳ねていた

出演者全員が自分たちの演目が
大成功を収めたことの
充実した満足感を噛みしめていた

勿論
その後は全員職員室に
呼ばれる羽目になったけど

卒業して数年後
北星余市高校に遊びに行ったら
担任達が
「イタヤ。あの時、先生方全員
お前が、素っ裸になると思って
ひやひやしてたんだぞ。」と
苦笑いしてた

※スモーク・オン・ザ・ウォーター
https://www.youtube.com/watch?v=R_U5hmCsmug


自由詩 北星余市の10期だもの Copyright 板谷みきょう 2021-05-15 00:53:24
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