芝桜
あらい
階層を施された荷馬車の一角にひかりが中る。
眩くて昇華される、どうやら辺りのようだ、
遺体の奥で植わる蛆虫が盛んに蠢いて出口をこさえていく。
それぐらいは許してもいいだろう
涙のかわりに胃液すら腐る未来の無い域を吐瀉した、
もうずいぶん落ちぶれて影も形もない
だれも見向きもしない余生を送っている
どれだけの酒を飲んだのだろう我儘もいい心地だ
めくるめく二度と、出会えない世界でまぐわう
それでまた愛を語らうつもりで
雨は富めどころなく時を虚ろわせ続ける
確かに冷たいだけのコワイロだろうが
出会いは、必然と偶然を育みながら
童は泣いている。あれは
私とも子とも、応えは同じだと叫んでいる
(それが吾身の姿だと諦めなさい)
其其の殺意を産む
(私はわたしだと 憐れみなさい)
是が私だと情け見なさい。
素直に見えるものを呑み込みなさい
(あきらめるのか さとるのか)
姿など、どうでもよかった
わたしののぞむ体は|生《な》し様に得ず、
だれかを想う躯が私をうみだす限り
私は私を離れ羽搏いていく自由があり
思うがままではなく、生まれ出る余興がある
『楽〆ればいい、愉沁み賜まえ』
小間使いの粗い聖遺物の 依代はやがて 男を選んだ。
飯炊きにも関わる 存命の介錯は 徒労にも芝桜の丘が似合う
なし崩しの夢を酔わせて それでいて簡素で 幾度も興させる
味のあるものだ。花は咲かぬが オンナはほらソコへ、
さる転移術の 円に急度 踏み込んだものでしょう。
そういう突飛なことあって珍しくも個性はない、私。