夏が来る
入間しゅか

夏が来る
懐かしい夏が来る
一度として同じ夏はなかったのに
懐かしい夏が来る
そうなんです
夏が好きで泣きたくなる
涙を流すのは
恥ずかしいことだと
思っていた少年時
伸び放題の雑草に挟まれた
川沿いの小径で
飛び回る羽虫の群れに
冬へのいきかたを
訊かれた気がして
泣きたくなった
泣けるわけでなく
その代わりに
手で羽虫を払いのけたら
もうすっかり夕焼けで
懐かしくて
ちょっぴり悲しい景色を
思い出したから
もうすぐ
夏が来る


自由詩 夏が来る Copyright 入間しゅか 2021-05-11 07:51:10
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