掬う言葉
ひだかたけし
欠落はせずに
只々遠く平板になっていくもの
追いかけても追いかけても
追いつけない現実に
後ろ手付いて息を吐く
二度と取り戻せない時の堆積
記憶は麻痺しながらも
思い出したように不意にまた
夢の映像を展開させる
そこに居るのは他者なのか
それともあくまで他人なのか
内なる舞台で踊る人
抱きしめようとする両手を
するりとかわし逃れいく
(見上げれば春、
熱波の青は揺れに揺れ
白い巨鳥が空を行く
溶解し出すこの意識
暗い影が付きまとい
言葉は未だ掬われず)
欠落はせずに
只々遠く平板になっていくもの
追いかけても追いかけても
追いつけない現実に
後ろ手付いて息を吐く