朝を行くか
オイタル
見慣れた風景に
「私」を当てて直線を引いた
直線はそのまま霞む山陰に沈んだ
屈曲する田んぼの畦道
わだかまる晩春の光線
ときおり風は
定規を重ねたように
直角に地上へと吹き降り
鳥は透明なコンパスに凭れて
張り出す翼の先に命の輪郭を刻む
薄い朝へと向かう朝
けれどもとにかく
朝は朝
長靴に潜り込んだ小石を探って
さあ 行くか
見慣れた玄関に
ずぶ濡れの野菜を並べた
とりあえずのマスクで
耳裏もかぶれた
頭上に潜む太陽の冠がつぶれる
遠くから銃撃
太った首と痩せたこめかみ
(どっからが本当でどこまでが嘘か)
( 田園を行く直線は本当のはずか)
柔らかに煮込んだ虚実をすすって
今日よ 始まれ
誰も見ていないのを良いことに
「ちくしょう」の一言を
曲がったストローで諦念の
青いジュースでも飲みほしてしまうか