世にも奇妙な花
atsuchan69

世にも奇妙な花というのが、
かつて俺の頭の中に咲いていた
血を吸う花で、
ふだんは俺の血を吸っている
それでも餃子を食べたりすると、
果たしてこの花は、
いきなり暴れて頭が痛くなる
それからしばらくは大人しいが、
ある日突然、
俺は吸血鬼になって
若い女の生き血を吸ったりした
俺を操っているのは、
もちろん、
世にも奇妙な花だ
――という、
実に危険な花なのだが、
眼を閉じて頭の中を覗くと
世にも奇妙な花が
空っぽの脳味噌の片隅で
とても健気に咲いているのが見える
まるで野に咲く巨大なタンポポだ
イケナイのは、
若い女の血を吸うことで
俺の血が美味ければ
花はそれで満足したにちがいない
しかし俺の血は、
致命的に不味かったのだ
いつしか俺は
吸血鬼になる夜を重ねた
幾人も、
また幾人もの若い女が犠牲になった
俺の肉体は
夥しい数の屍に埋もれ、
やがて俺という存在の記憶も忘れて
気がつくと、
巨大なタンポポみたいな
世にも奇妙な花そのものになっていた
こうして俺はたった今、
あなたの、
頭の中に咲いているのです







自由詩 世にも奇妙な花 Copyright atsuchan69 2021-04-12 06:20:23
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